今年の全国市民政治ネットワークの交流集会は「共に生きる社会をめざして」と題し、2日間(5月21日(土)〜22日(日))にわたる研修と交流が横浜市教育会館で開催されました。
初日の「政策フォーラム」では、エネルギー・食・子育てに焦点をあて、コーディネーターとして、前参議院議員/東京・生活者ネットワーク元代表委員の大河原まさこさん。パネラーはFOE JAPANの吉田明子さん、江戸東京野菜生産農家の高橋金一さん、NPO法人ピッピ・親子サポートネット理事長の友澤ゆみ子さんの3人。さらに、これら3テーマのいずれにも先駆的な取り組みを展開してきた世田谷区から保坂展人区長をお招きして、パネルディスカッションが行われました。
原発ゼロ社会の実現は、多くの国民の思いです。省エネ科学推進はもとより、原発に頼らない自然エネルギーや小規模・地産地消の再生可能エネルギーを増やすこと。食の地産地消を進め、江戸時代からある種を守る野菜栽培や都市農業を推進すること。「保育園落ちた!ブログ」がクローズアップした待機児童問題。地域で子育てしやすい環境整備を進めていくためには、子ども・生活者の暮らしの現場である自治体・ローカルから問題を提起し、対案を示していく市民政治の推進とともに、国会にその政策を進めてくれる議員を送り出すことも実現の早道。各パネラー、全国から集まった市民政治ネットワークのメンバーらからの「生活の現場の声を政治に活かしてもらいたい」意思を、参議院選挙(全国)比例代表に立候補を予定する大河原さんに託す場ともなりました。
フォーラム終了後、桜木町駅前のみなとみらい地区へ移動し、全国から集まったメンバーが参院選に向けて大河原まさこさんの応援アピールを行いました。原発ゼロのマスコットキャラクター「ゼロのみクマ」も応援にかけつけてくれました!!
5月22日(日) 分科会報告 第1分科会 ピースリングツアー県央コース
<コース>JR横浜線相模原駅→駅ビル屋上市営駐車場から相模総合補給厰を望む→返還地(淵野辺公園、 こもれびの森、相模大野中央公園、相模原住宅地区)→キャンプ座間外周返還地(病院、自衛隊官宿舎、消 防署建設現場)→座間公園→キャンプ座間ゴルフ場→厚木海軍飛行場→大和市引地川公園ゆとりの森→小田急大和駅
相模総合補給厰 旧相模陸軍造兵厰。JR相模駅から隣りの矢部駅までフェンスがあり、214万㎡東京ドーム40個分。従業員582人。物資保管、修理などの兵站事業を担う。ベトナム戦争末期(1974年頃)戦車、装甲車の修理をしており野積場には数千台並んでいました。
旧海軍航空基地 東京ドーム82個分。従業員1083人。米海軍航空部隊の航空機の整備、補給、支援事業。厚木と名はついているが、綾瀬市と大和市にあります(一部海老名市)。オスプレイ配備。騒音問題は長期訴訟となっています。滑走コース直下にある大和市ゆとりの森公園は、小さい子どもの遊具があり休日は大勢の家族連れがきているが、祝日などお構いなしに戦闘機が飛びます。この日は日曜日で飛行はなく大勢の市民がタープテントを張って楽しんでいました。現在、5月13日から横須賀に原子力空母ロナルド・レーガンが入港しており期間が長い。艦載機はタッチ&ゴーなど定期訓練が必須であるため厚木飛行場での訓練が始まります。艦載機の爆音は戦闘機のそれを超えます。
第1分科会 ピースリングツアー横須賀コース
JR横須賀駅近くの放射線物質のモニタリングセンターを見て、この静かな海に原子力艦が出入りすることに改めて気づかされました。深浦港からヨコスカ平和船団の船長さんの案内で約1時間、海からでなければ見ることのできないたくさんの艦船を見学しました。まず、海上自衛隊の大型艦船の数に驚き、従来の沿岸型から外洋型に変わってきて、自衛隊が地球上どこでも任務が可能になっていることも初めて知りました。そして、米海軍のイージス艦が10隻以上。そのうち5隻がここからイラク戦争に参戦し、900発もの爆弾を投下したとのこと。米海軍の海外母校はここ横須賀だけで、この海は間違いなく戦場と直結しているのです。その奥には原子力艦ロナルド・レーガンが、ひっそりと、しかし不気味な存在感を漂わせて停泊していました。基地問題とどうやって向き合うのか、自分の問題として受け止めるかは戦後71年経っても解決できていない重要な課題です。
第2分科会 福祉の現場ツアー ワーカーズ・コレクティブがつくる地域福祉
福祉クラブ生協は住み慣れた地域で人間関係を保ちつつ、自分らしく暮らすためのしくみづくりを神奈川県内18業種・108のワーカーズと地域ごとに行っている。
1階が福祉事業のワーカーズの共同事務所と保育室、2・3・4階はデイルームと有料老人ホームの複合施設である「きらり港北」を見学。共同事務所は、一人ひとりをささえるためのワーカーズ間の情報共有と調整の場となっています。有料老人ホームは自己決定を尊重し、それをサポートすることを大切にしています。
ひとりの「困った」や「○○が必要」に寄り添う「ピッピ・親子サポートネット」
横浜市青葉区は人口30万人、若い世代が多く、子育て世代が孤立しがち。当日はどんな理由でも預けられる「ピッピ保育園」での休日保育を見学。定員30名の認可保育園、地域の相談の場、一時保育の場となっています。相談から一時保育につながり、孤立していた家庭が地域につながります。
人口360万人の横浜市は、市域も広く、それぞれ地域性があるにも関わらず、市で決定した一律の行政サービスが行われてきました。現場からの制度提案をするとともに、地域で必要なものは地域で作り、実践する。まさに自治する市民です。
第3分科会 ローカルパーティーと議会改革
①議会の対話力を磨く 「所沢市議会の議会改革 政策討論会などの取り組み」(報告者;末吉美帆子さん 所沢市議/市民ネットワーク所沢)
対話力と調査力で議論を深め、より質の高い政策を形成できる議会へ。分かりやすい情報公開や市民参加は当然、市民の政治参加で市民自治を高めることが目標。「市政の主役は市民」と指摘。“おまけ”のメッセージ「TPP(テッテイテキにパクリ)でいきましょう」に会場は盛り上がりました。
②開かれた議会を市民とつくる 「始まりは市民有志ボランティアによる市議会中継」(報告者;田頭祐子さん 小金井市議/小金井・生活者ネットワーク)
小金井市議会では、2013年3月議会からUSTREAM及びYoutubeで中継・配信を行っていますが、そのきっかけとなったのは、市民有志ボランティアによる議会中継、その結果、議会も市民にも変化があり、その経緯等を紹介。今後の議会側の課題として、議会運営委員会で、具体的な運用ルールを「議会改革」の項目として議論することが必要。
③多様な議員が活躍できる議会 「議員の育休をめぐる議論から見えたもの」(報告者;山田裕子さん 越谷市議/越谷市民ネットワーク)
会議規則に「育児による欠席」を加えることが出来なかった経緯をフェイスブックに書き込んだことが議会内の揉め事に発展し、それが市民の関心を呼んだ経緯を紹介。議会をオープンにし、市民が「どんな議員を望むのか」考えるきっかけを作り続けたい。
④議会の慣例・慣習を変える 「副議長は質問ができないの?」(報告者;干場芳子さん 江別市議/市民ネット江別)
副議長が一般質問をできない江別市議会の慣例について報告。議会運営委員会で慣例の是正を提案したが、合意に至らず。その後、2つの市民団体から要望書が提出されている経緯とともに、議会内の合意形成の難しさについて問題提起。
⑤議会のびっくりポン! 「議会ここが変!」(報告者;内川由喜子さん 神奈川ネットワーク運動 調査・政策スタッフ 三宅真里さん 鎌倉市議/神奈川ネットワーク運動・鎌倉)
条例制定運動や議会改革の取り組み、ローテーションで議員を替り合うことで気付く議会のおかしなところを、分かりやすく指摘していく必要性について報告。初日に行った参加者によるシール投票「議会のここが変!」では、一人会派は4年に一度しか一般質問できない「神奈川県議会」が“1位”でした。
議会を改革していく時の「議員」の役割、「市民」の役割を考える上で、参考になる事例が多くありました。また、市民参加や議会の可視化のためには、情報の公開の手法も問われます。恣意的な限定公開は問題ですが、一方で、膨大な情報をただ公開しても、市民には争点が伝わりにくく、市民自治をすすめるための議会の機能の重要性を改めて確認した分科会となりました。
第4分科会 調査活動を政策提案へ
①現場の声を制度に生かす「介護保険改定影響調査」(報告者;渡辺あつ子 川崎市議会議員/浜田順子 神奈川ネットワーク運動)
全域で1年かけて地域ネット、ワーカーズ、NPOで調査。代理人のいない地域は市役所に総合事業に対して調査。
②現場の声を制度に生かす「子ども・若者プロジェクト報告」(報告者;佐々木ゆみ子 神奈川ネットワーク運動県議会議員)
自立支援法の任意事業である学習支援の現場視察や調査。生活保護世帯やひとり親世帯が増加する中困窮世帯の定義もあいまい。経済的貧困だけでなく地域社会から孤立する精神的貧困もあることが見えてきました。
③「生物多様性の視点で玉川上水を歩いてみた」(報告者;武内好恵東京・生活者ネットワーク組織委員会委員長)
2006年から10年間全地域ネットで水辺の調査活動、みどりの生き物調査を実施。2014年にツバメの観察会、2015年に玉川上水を区部編と市部編に分けて調査。おとめ山公園と下落合みどりの探検を実施。水質調査や水辺の調査、生き物調査など環境に関する調査は大人だけでなく子どもや若者、若い母親等誰でも参加しやすい。一般質問、予算要望につなげました。
④「平和の森公園」を今のままに(報告者;細野かよこ 中野・生活者ネットワーク区議会議員)
2015年の議会で区長が平和の森公園への体育館移転とスポーツの拠点の検討を表明。この再整備計画に対して、今のままの状態で残してほしいという住民の活動について報告。アンケート調査を実施。成果として、市民一人ひとりとじっくり話をして、計画の詳細を伝えることができました。
第5分科会 地域から進める政治参加「若者と政治をつなぐ」
公職選挙法改正により、選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられ、新たに選挙権を得る有権者が約2%、240万人もの若者が投票できることになります。そこで、若い世代が政治への関心をもつために地域政党ができることはなにか、考える機会となりました。
基調講演は原田謙介さん(NPO法人 Youth Create代表)から自身の活動から見出した「選挙以外でかかわることがカギだとおもった」ことから、街のことや地域の政治とのきっかけとなる具体例が話されました。
小川泰子さん(神奈川大学非常勤講師)から自分のゼミの学生が主体的に動いたことにより結果的に大学生の主権者教育となった事例。青木マキさん(横浜市議)からは若者のアンケートの取り組みから政治のどんなところに関心があるかについて報告。また、池田真紀さんが挑戦した北海道5区補欠選挙から見えたことと題して、突撃?取材をした高橋茂さん(㈱Voice Japan代表取締役)から選挙戦について報告がありました。
政治を特別なものにしないためには、直接議員に会うこと、若者の実情を知ること、そして、若者の力を必要としている社会全体の変化におとながもっと気づくことが大事です。